本書は2010年刊行。著者朝井リョウは1989年生。なんと平成生まれの19歳で、本書を執筆し、すばる賞を受賞しました。2013年には直木賞も受賞。現在は会社員作家だそうです。
「17歳の一瞬のきらめきを描くオムニバス
バレー部の主将桐島が、突然部活をやめた。そのことで、同高校に通う5人の生活に小さな波紋が広がり…。至るところでリンクする17歳の物語。瑞々しい感性が光る第22回小説すばる新人賞受賞作。」
女子中、女子校に行っていた私には、共学の青春ドラマは眩しく、羨ましい。
今の軽いノリの高校生たちも、それぞれに問題を抱えている。
本のタイトルの、すべてにかっこいいバレー部のキャプテン、桐島が部活をやめたというニュースが学内を走り、それによってバレー部員やその彼女にも波紋が広がっていきます。
本書は映画にもなりました。
主な登場人物は桐島を除いて6人。狭い高校生活の中で、男子3名女子3名それぞれの立場から一人称で去来する思いを、全くの口語体で描かれています。
「思ったことをそのまま言葉に」にし、「勢いのまま生きるって、なんだから楽だし、今しかできないような気がする」男子たち。(
菊池宏樹)
桐島のポジション、リベロをすることになった小柄な
小泉風助。
ブラスバンド部部長の
沢島亜矢、コンクールまであと3日、密かに竜汰に恋している。
「なんで高校のクラスって、こうもわかりやすく人間が階層化されるんだろう。男子のトップグループ、女子のトップグループ、あとまあそれ以外。ぱっと見て、一瞬でわかってしまう。だってそういう子達って、なんだか制服の着方から持ち物から字の形やら歩き方やら喋り方やら、全部が違う気がする。何度も触りたいと思ったくしゃくしゃの茶髪は、彼がいる階層以外の男子がやっても、湿気が強いの?って感じになってしまう。(沢島)
そして一番心惹かれるのが、映画部でカメラを回す前田涼也。映画部や映画部員はダサいと思われている。目立つのが大嫌いなのに、高校生映画コンクール、またの名を映画甲子園で特別賞に選ばれ、集会で校長から発表されるが、一般生徒からはダサいと冷笑される。(高校生はこういう文化部はダサいと思っているのかな???)
「高校って、生徒がランク付けされる。なぜか、それは全員の意見が一致する。英語とか国語ではわけわかんない答えを連発するヤツでも、ランク付けだけは間違わない。大きく分けると目立つ人と目立たない人。運動部と文化部。」
「目立つ人は目立つ人と仲良くなり、目立たない人は目立たない人と仲良くなる。目立つ人は同じ制服でもかっこよく着られるし、髪の毛だって凝っていいし、染めていいし、大きな声で話していいし笑っていいし行事でも騒いでいい。目立たない人は、全部だめだ。」(前田ー神木隆之介、ん〜、かっこ良すぎるね)
宮部実果、ソフトボール部、桐島の彼女梨紗も、「菊池宏樹」が付き合っている沙奈も実果のグループ。実果の彼氏は桐島がやめたあとキャプテンとなる孝介。
「高校生活を送る上で女子にとって必要なものって、まず最低限は外見だ。その点私はラッキーだったな、なんて自分で思う。」
「くだらないかもしれないけれど、女子にとってグループは世界だ。目立つグループに入れば目立つ男子と仲良くなれるし、さまざまな場面でみじめな思いをしなくてすむ。どこのグループに属しているかで立ち位置が決まる。」そうなのか〜。大変だねえ。
こんな実果だが、家庭に問題を抱えている。この宮部実果の章はちょっとシリアスで、この後どういう展開になるのかと期待を持たせるが、そうはならない。
そして再び
菊池宏樹ー東出昌大
「俺たちはまだ17歳で、これから何でもやりたいことができる、希望も夢も何でも持っている、なんて言われるけれど本当は違う。これから何でも手に入れられる可能性のあるてのひらがあるってだけで、今は空っぽなんだ。」
文庫化された時に加わった
東原かすみ、バトミントン部で映画好き。ー橋本愛
こんな青春小説ですが、その一人一人の人物像がしっかり描かれていて、遠い世代なのに、おばあさんが読んでもそれなりに楽しめました。
テーマ : 日々のつれづれ - ジャンル : 日記
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