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『茜いろの坂』by 船山馨

本書はAさんに薦められて知り、読み始めました。

作者船山馨は1914年生れ、1981年、67歳で死去。WIKIによれば、ジャーナリスト出身で戦中より小説を書き始め、何度か芥川賞の候補となるが、戦後ヒロポン中毒となり、長い低迷期を過ごす。1967年の『石狩平野』が代表作。本書『茜いろの坂』は遺作で、1980年吉川英治賞受賞。

「金で身を売りながらも清らかさを失わない不思議な女性香西節子ー貴金属商として辣腕をふるってきた秋山修介は、彼女の出会い、その魂に触れて現世の欲望のむなしさをしる。腹心の部下に会社を追われ、脳腫瘍のため1年の命を宣告された修介は、心の夕映えを異境に求め、帰るつもりのない旅に出る。」

著者は本書の「あとがき」で「残された半年をかけて遺書のつもりで最後の作品を書こうと思った」と述べている。

秋山修介は日中戦争従軍中に様々な残虐行為にかかわり、中国人から翡翠を奪い、戦後それを元手に貴金属商として会社を興し、銀座に宝飾店を構え、富と地位を築く。そんな彼が北海道で自分が乗るはずの飛行機のチケットを学生時代の友人井岡の学生だった若い学者、磯村に譲ったが、その飛行機が墜落し、全員死亡。

秋山はその磯村の妻、節子と出会う。節子はかつて友人井岡の愛人だった。節子は擁護施設で育ち、水商売で、身を売っていた。

井岡は節子を「悪意、憎悪、侮辱といったものに反応する能力が欠如している。どうも悪意を、善意とおなじように受け入れてしまうようなところがある」という。

秋山はめまい、頭痛、吐き気に苦しみ、余命1年と知ることになる。香西節子は婚家を追い出され、困窮していたが、保育園で子供たちの世話をしたいという夢を持っていた。節子は秋山を「足長おじさん」のように慕う。病に苦しみ、会社で戦友でもある部下にも裏切られた秋山は、そんな節子に心の安らぎを得ていた。節子は井岡との子供を二度中絶し、その罪の意識に苦しんでいた。

「香西さん。あなたも日が落ちる前に、夕焼け空が茜色に染まって輝くのを、美しいと思ったことがあるでしょう」
修介は疲れと羞恥の感情で眼を閉じた。
「私のように悪いことの限りを尽くして生きてきた人間には、そんな夕映えのような最後があろうとは思えません。また、あってはならないとも思います。ですが、あなたを見ていると、そんな私にも、もしかしたら茜色の空のような明るみの中で、死んでいけるような気がするのです」・・・”

著者は病床で、最後の作品として眼底出血で視力が衰える中、和紙に筆で執筆したという。
死を前にして、自分の人生の暗部に対峙する秋山、若くして自分の過去に苦しむ節子。秋山は将来の節子の幸せのみを願うようになる。

秋山は65歳でスイス、モンブランの夕映えを見て、節子のそばで息を引き取る。

死を宣告され、死ぬまで生きる、その心の準備に心の杖(節子)を求めていたが、もう杖なしで死に向って歩いてゆけるようになっていった。

心の中で大きな波の起こる本だった。だが、この本を薦めてくれたAさんのようにこの世界に浸りきることはできなかった。なぜなら、女性(私)からみて節子はありえない女性だからだ。「売女にして聖女」はマグダラのマリアもそうし、ドフトエフスキーのソーニャを連想させるが、ソーニャはこんな違和感を抱かせなかった。そんな女は節子のように雄弁に自分を語らないし、もっと精神がシンプルで純朴だ。そして、自らの堕胎にこんなに苦しんだりはしない。

「人はこの世の孤客なれば ひとり何処のよりか来たりて 束の間の旅に哀感し ひとり何処へか去るのみ」

おしどり夫婦として知られた作者の妻の春子も船山の亡くなった日の夜に狭心症のため急死。船山の死と共に報じられ話題となったと知り、そう言えばそんなニュースもあったと思い出しました。

これは1981年にTVドラマ化され、主人公秋山修介を小林桂樹が、香西節子を吉永小百合が演じたのだそうです。ドラマにするには難しそうな本だと思います。どんなドラマだったのでしょうか。

テーマ : 日々のつれづれ - ジャンル : 日記

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