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『さようなら、オレンジ Goodbye, My Orange』by 岩城けい

とても上質な本だと思いました。160頁あまりの本ですが、こんなに読後感がいいのは久しぶりです。
涙が出るわけでも、ワクワク、ドキドキするような話でもありませんが、心の深いところを揺さぶる本でした。

本書は岩城のデビュー作品。「太宰治賞受賞」、第150回芥川賞候補作品
岩城けい(いわき 1971年生)は大学卒業後単身渡豪。在豪20年。

帯によると「オーストラリアの田舎町に流れてきたアフリカ難民サリマは、夫に逃げられ、精肉作業場で働きつつ二人の息子を育てている。母語の読み書きすらままならない彼女は、職業訓練学校で英語を学びはじめる。そこには、自分の夢をなかばあきらめ夫について渡豪した日本人女性「ハリネズミ」との出会いが待っていた。

第150回芥川賞を惜しくも逃すがその講評

「岩城さんの作品も、これを非常に推す委員と、『足りないのではないか』という委員が論議を重ねました。推す委員は『言語をいかに獲得していくか』ということの切実さと、逆に獲得していくことで失われるものがきちんと描けていて、感動があった。それに物語としても面白い、と。反対する選考委員はそれらの意見を認めつつ、アフリカ人のサリマ(登場人物の一人)をもっと深く描かなければ、物語として説得力を持たせることができないのではないかと指摘しました」とのこと。

構成が変わっていて、英語で小説を書こうとしている日本人の女性が信頼を寄せる英語教師へ宛てた手紙と、自分の小説とが交互に語られています。小説の部分はしっかりした明朝体で、手紙はちょっと優し気な教科書体??で。

故郷の戦火を逃れ、大きな島へ難民として生きる子連れのアフリカ人女性(サリマ=ナキチ)と、大学の講師の妻として異国で暮らす日本人女性(さゆり=ハリネズミ)との英語教室での出会い。そして再びスーパーマーケットの精肉作業という職場で出会った。子供との別れ。二人はお互いに知り合い、それぞれの道を昂然と頭を上げて、しなやかに生きていく。

さゆりの恩師宛の手紙に

「いかに自分が母語に甘え、堕落しきっていたことか思い知らされました。あれ以来、母語で読み書きすると、とても粗野な気持ちになるんです。私は自分の言葉を知っているつもりでいただけで、その真意を知ろうとせず傲慢だった。誠実じゃなかった。そして、外国語を学んでみて初めて、気づかされたことのなんと多いことか。話すこと聞くこと、つまり音声は社会生活の実地に学び、特に精神的肉体的に歓び、もしくは痛みをともなうときに強い感情と結びつき、耳や舌に永遠に刻印されます。しかし、読むこと書くこと、つまり思考の支えになる言語を養うことは個人的でしかも、彼もしくは彼女の頭の中でさまざまに形を変え繁殖します。それは、胸の底の奥深くに言葉の種を撒くことに似ています。若いときは易しいことだというのに、歳を重ねると固くなった土を掘り起こすことは、困難なことになり得ます。若くもなくたくさん年を重ねているわけでもない今、読むという視覚的な入力だけでなく、拙いながらも書くという出力の行為にすがり、心という土壌に言葉の森を育てることをいつの日にか実現させてみたいです。」


アフリカ人女性サリマは息子の学校で、故郷について英語で書いた作文を四苦八苦しながら、書き上げ、発表する。息子に自分の生まれた土地根っこを伝えるために。

「私の家は砂のうえにあった。お父さんとお母さんと弟がふたりいた。/朝、おひさまがのぼるとおひさまといっしょに学校にでかけた。/大きな木のしたで、砂に指で字をかいた。ともだちが、字がかけたらなにかいいことがあるのかときいた。/かけないよりかけたほうがいいと私は言った(中略)砂のうえで私は育った./お父さん、お母さん、弟たち。/はたけも作物はぴかぴかしていて、もう食べられる。そんなゆめを見ていたと思うことにした。/オレンジ色のおひさまがいつもうかんでいる、ゆめ」

さゆりはこの「私の大切な友達のこと」を書こうと思ったが、それは英語では書くことができない。日本語にしかならないのだという。「祖国からたったひとつだけ持ち出すことを許されたもの、私の生きる糧を絞り出すことを許されたもの」、すなわち母語である日本語で書こうと決意する。

異国で生きる女性の勇気、真摯、矜持、たくましさ、それに言語、語学に関心のある方、ぜひお読みください。

テーマ : 日々のつれづれ - ジャンル : 日記

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