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『本格小説』水村美苗

『本格小説』は上下で900頁ある本ですが、引き込まれ、珍しくあっという間に読み終えました。そして珍しく読後夢うつつの状態に陥っています。

著者自ら「東太郎の話 ― それは、一言で言えば、今までに無数に語られてきた恋愛物語のひとつでしかない。そんなものを今さら自分で書こうという気になったのは、実はそれが、昔、少女時代に翻訳でくり返し読んだ懐かしい小説の数々をふいに鮮やかに胸に呼ぶ覚ますものだったからであった。それは、とりわけ、読むたびに強烈な印象を受けずにはいられなかった、あるひとつの英国の小説とよく似ていた。ヒースの生えたヨークシャーの荒野を舞台にしたもので、今から百五十年以上も前にE・Bという英国人の女の作家によって書かれ、次第に世界の大古典とみなされるようになった小説である。」と言っています。

そう、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』のヒースクリフ(東太郎)とキャサリン(よう子)が戦後の日本の風土の中で描かれています。しかし、復讐劇ではなく、もっと日本の湿気を感じさせる、哀しく抑制された夢のような愛のお話です。嵐が丘同様、よう子ちゃんの家に仕えていた「女中」がたまたま軽井沢の別荘に迷い込んだ出版社に勤める青年祐介に長~いお話を語り、祐介がサンフランシスコで日本文学を教える作者に語ると言う形式をとっています。

構成から変わっていて、第1章が始まる前に「序」と「本格小説が始まる前の長い長いお話」というのがあって、どうしてこの本を書くに至ったかというのが160頁もあるのです。このプロローグは作者の生い立ちを私小説のように書かれたものですが、彼女の素晴らしい経歴は控えめに、しかし自分の家族のアメリカ生活は赤裸々に書かれています。

この作者水村美苗さんに子供の頃会ったことがあります。彼女の中学1年生のときです。実はこのプロローグに出て来る美苗さんのおねえさんの水村奈苗さんは小田急線沿線のカトリックの女子中学のクラスメートで、美苗さんは2学年下の下級生でした。同書で紹介されているように奈苗さん中3、美苗さん中1の時、お父さんの転勤で家族でニューヨークへ転校して行きました。当時あこがれのニューヨークへお引っ越しだなんてクラスメートみんなでうらやんだものです。
仲のいい姉妹ですが、妹にこんなふうに書かれて姉妹仲に問題は起きなかったのだろうかと思ってしまいます。

20年前に美苗さんが夏目漱石の未完成遺作『明暗』の完成作品として「續明暗』を書いて、大評判になった時、どうしてずっとアメリカで教育を受けた人が、漱石の続編が書けるのか不思議に思ったものですが、今回、この『本格小説』のプロローグを読み、彼女が中学からずっと日本文学をむさぼり読んでいたことがわかり、そうだったのかと納得しました。

このプロローグにもこの本の主人公東太郎が作者の父親の会社で働き、彼女の家にもときどき来ていたので、頻繁に出てきます。プロローグの部分が実名で真実(?)なので、第1章からのお話も、わからないように名前を変えると断ってはいますが、ほんとうのお話のように見える心憎い作者のテクニックです。

また「東太郎という名は実名である。……… いづれにせよ、たとえ別の名を使おうと、古くからニューヨークにいる日本人には誰のことだかすぐに判る筈である」といっていますが、断定されていないようです。

プロローグで日本文学における私小説などの文学論も展開しています。

水村さんが通学した学校が私と同じ中学、舞台となった千歳船橋は私が結婚当初住んでいたところで、よう子ちゃんが通った春光幼稚園は私の家のすぐそばだったのでよく知っています。どこまでもリアルで真実と虚構の垣根が見えてきませんが、お話は現実には起こりそうもない、こんな恋愛があるのかと思われる、幾層にも重なったまさに小説のようなお話なのです。

『本格小説』の名にふさわしい本格的に小説でした。

テーマ : 日々のつれづれ - ジャンル : 日記

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