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『私を離さないで』Never let me go カズオ イシグロ 土屋政雄訳

2020年 新年のご挨拶をし損ねているうちに、バタバタと七草も過ぎてしまいました。

でも、この素晴らしい本を読みながら、新年を迎えることができました。

作者はノーベル賞作家カズオ・イシグロ(1954年長崎生まれ)
イシグロの本では『日の名残り』、『遠い山なみの光』に続いて3冊目です。

「優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度…。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく―全読書人の魂を揺さぶる、ブッカー賞作家の新たなる代表作。」

『わたしを離さないで』はどの分野の小説なのだろうか。SF?思春期の少女たちの揺れ動く微妙な心の動き、日常が丹念にリアルに書かれていて、こころに沁みわたってきます。しかし大前提になっている背景が現実ではない戦慄のサイエンスフィクションなのです。一つ間違えれば、ありえそうな寒々とした恐怖を感じます。

巻末の解説で柴田元幸が
「細部まで抑制が効いていて、入念に構成されていて、かつ我々を仰天させてくれる、極めて稀有な小説である。
静かで端正な語り口とともにはじまって、いかにもありそうな人間関係が丹念に語られるなか、作品世界の奇怪なありようが次第に見えてくる。そして、、世界の奇怪さが見えてきたあとも、端正な語りから伝わってくる人間的切実さはますます募っていき、もはや他人事ではなくなっているその切実さが我々の胸を打ち、心を揺さぶる」とのべています。

まさにその通りです。

場面は1990年代末のイギリス、キャシーという31歳のベテラン介護人の回顧録です。「介護人」というからには病人を相手をしているらしい。しかし病人は「提供者」と呼ばれています。今介護の職を辞するに当たって、子供時代を詳細に回想しています。その病人にはキャシーが育った施設ヘールシャムで一緒だった幼馴染のルースやトミーが含まれています。

本書は前半は子供時のヘールシャム、実社会へ出るためのウォーミングアップのようなコテージでの暮らし、そしてキャシーが介護人になったあとのルースやトミーとの暮らしの3部から成っています。

作者は半ばのさりげないフレーズで、その種明かしをしてしまいますが、ここではそれに触れずに書きたいと思います。イギリスの重く垂れ下がった曇天の暗さと静かさが全編流れています。

『わたしを離さないで(Never let me go)』というタイトルは主人公キャシーの大好きな曲名です。キャシーはこの曲を聴きながら枕を赤ちゃんのように抱いて、腰を揺らして踊るのです。切ない別離を暗示するタイトルです。

思春期の少女たちの仲間意識や除け者意識、壊れやすい関係と一緒の生活する固い絆、施設特有の暮らしと外部の人々、性の芽生えと性への罪悪感。嫉妬、羨望、差別が子供達の成長ともに抑揚を抑えたタッチで描かれています。そして真実の恐怖もさりげなく行われるのです。

最後のキャシーのとった選択の悲しさ、切なさ。もう心身ともに疲れ切った彼女にはその選択しかなかった。。。

 土屋政雄の翻訳は翻訳特有の違和感を感じさせない読みやすい文章でした。本書は発想が独創的ですが、日常を丹念に描いているので、奇抜さも強引さも感じさせず、抑制のきいた流れが感じられます。

またこの作家の本を読みたいと思いました。ぜひお勧めしたい本です。

******
昨日我が家の猫(アビシニアン)が息を引き取りました。
暮れから急に具合が悪くなり、三が日も点滴や注射を施しましたが、飲むことも食べることもできなくなり、あっという間に痩せて、動けなくなりました。腎臓が機能しなくなったとのことです。17歳でした。おとなしい、美しい猫でした。

テーマ : 最近読んだ本 - ジャンル : 本・雑誌

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