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『キルプの軍団』 大江健三郎

本書は1988年に岩波書店から単行本として刊行されています。それが昨年(2018)岩波文庫化され、作者による加筆修訂がおこなされて発行されたとのことです。

本ブログを始めてから大江の本としては『水死』、『晩年様式集 In Late Style』を載せていて、3冊目となります。

主人公は高校二年生の僕、理系志望でオリエンテーリング部の部長です。父は小説家で、知的障害のある兄と姉がいる次男で、大江の家庭を連想させられます。

「高校生の僕は、ディケンズの『骨董屋』を読み、作中のキルプにひかれる。そして、刑事の忠叔父さんと一緒に原文で読み進めるうちに、事件に巻き込まれてしまう。「罪のゆるし」「苦しい患いからの恢復」「癒し」を、書くことと読むことが結び合う新たな語り口で示した大江文学の結晶。」

文章は平易なのですが、文中に注釈が入り込み、相変わらずの読みにくさです。その上、この本のベースにチャールズ・ディケンズの『骨董屋』やドフトエフスキーの『虐げられし人びと』のストーリーが入り込みます。それに聖書のアブラハムとイサクの話も。

若い頃にドフトエフスキーは数冊読みましたが、ディケンズは読んだことがなく、これを読まずにはこの本は読み進めないのではと思わせる展開でした。

題名となるキルプ(Quilp)は『骨董屋』に登場する、強欲で狡猾で悪の権化のような高利貸しです。彼が軍団を持っているわけではありません。主人公は少女ネルで、祖父が孫娘を幸せにしたくてギャンブルにハマり、キルプから借金のかたに骨董屋を奪われ、祖父と放浪の旅に出るのです。このネルと『虐げられし人びと』のネリーを重ね合わせています。

一方、主人公の僕はディケンズ好きの忠叔父さんが上京している間、叔父さんの手助けでディケンズの『骨董屋』を原書で読んでいきます。忠叔父さんは四国の警察官ですが、故郷で知り合ったサーカスの一輪車乗りの百恵さんとその伴侶である映画監督の原さんをキルプのような借金の取り立てから守ろうとしています。2人は小田原の人里離れた山奥に隠れ住んでいます。

忠叔父さんは結局オリエンテーリングをやっている僕(オーちゃん)に百恵さんたちとの連絡係を依頼することとなります。原さんはかつては学生運動の活動家でした。今原さんは昔の仲間と以前から撮りためた百恵さんの一輪車に乗るシーンをもとに、新しく映画を作ろうとし始めます。

本書にディケンズの原文も訳文とともに紹介されています。ディケンズの文章は、構文は中学生でも読めそうなほどシンプルですが、平易な分、いろいろな解釈が可能な表現で、決して易しいとは言えません。

文庫の巻末に「読み・書くことの治癒力(あとがきにかえて)」という大江自身の解説がついています。
「この小説の、主人公の高校生にとってと同様、さらにそれ以上に書き手の私にとって重要であったのが、「罪の許し」という主題」だと述べています。
「少年が苦しい経験をし、なんとかそれを乗り越えもした、そしてある安息の思いと共に新しい展望が彼のものになった、その点では、これは文化人類学でいう通過儀礼(イニシエーション)の小説だと」も言えると述べています。

後半は活劇のような急展開となるのですが、大江のいうこの主題がそこに生かされているでしょうか。祈りと罪のゆるし。この重いテーマとテーブルをひっくり返すような大事件を通して語るには無理があるように思いました。他の持っていき方はなかったのでしょうか。

図書館より返却催促のきた本、やっとお返しできます。ごめんなさい。

テーマ : 最近読んだ本 - ジャンル : 本・雑誌

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