作者平野啓一郎は1975年愛知県生まれ。
彼の作品を読むのは多分処女作『日蝕』以来だと思います。20年くらい前に読みました。内容はほとんど思えていないのに、難解だったという印象だけが残っています。
本書は同じ作家の作品とは思えないほど読みやすく、面白く、一気に読み終えました。
「弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」について奇妙な相談を受ける。
宮崎に住む里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って、14年ぶりに故郷に戻った後、「大祐」と再婚して、幸せな家庭を築いていた。ある日突然、「大祐」は事故で命を落とす。悲しみに打ちひしがれた一家に、「大佑」が全くの別人だという衝撃の事実がもたらされる・・・・」
キーパーソンの弁護士城戸は真摯にいろいろな仕事に取り組む弁護士です。城戸は在日3世ですが、それをカミングアウトした上で、良家の子女と結婚をし、長男をもうけます。今は夫婦の間はしっくりしていません。
一方、依頼人の里枝も2歳半の次男を脳腫瘍で亡くします。この時の治療を巡って夫と対立し、決定的な齟齬が生じ、離婚することとなります。その際、弁護士の城戸に依頼し、長男の親権を得ます。その後、父の死をきっかけに郷里宮崎に帰り、両親の文具店を継ぎます。
里枝は店の客だった谷口大佑と再婚し、女児が生まれ、慎ましく幸せでした。そんなとき夫大佑は仕事の事故で突然亡くなります。大佑は父親の臓器移植を巡って実家とは疎遠になっているので、一切の連絡をするなと言っていました。
大佑の死後一年して、大佑の兄恭介に連絡を取るとすぐにやって来て、」「大佑」の写真を見て、大佑ではないといいいます。そして、里枝はかつて離婚の際世話になった東京の弁護士に連絡を取るのでした。城戸は依頼人里枝のお金にもならない案件にも誠実に対処していきます。
本物の大佑は今どこで何をしているのか。里枝の夫だった大佑は誰なのか。城戸の結婚生活は?
夫婦間の価値観や社会観、小児の難病、離婚、臓器移植、兄弟関係、セックスレス、在日問題、嫌韓、ヘイトスピーチ、犯罪者の家族、死刑制度、いじめ、なりすまし、死生観、血縁 生きる、自分の過去、愛
この本のキーワードを並べてみたら、こんなに重いワードが並びました。350ページの本にこのような重要なテーマが盛り沢山にぎっしり詰まっています。
作者の思い入れも深いものがあったのではないかと思いますが、もっとテーマを絞った方が良かったのではないかと思いました。
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