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『西行花伝』辻邦生

本書は500数ページに及ぶ大作です。

内容的にも重厚な本で簡単に読める本ではありませんでした。平安末期の西行のお話です。この本は1995年に購入し、20数年積んどいた本ですが、いい本だという評判を聞いていて、ずっと心に引っかかっていました。間に色々な本をつまみ食いし、やっと読み終えました。

時間がかかった理由は保元平治の乱あたりの歴史的知識の不足、歌が柱となって話が進んでいきますが、その歌心の欠如、書かれている用語の難しさがありました。読めない漢字もありました。作者はどれだけ資料にあたって執筆したか、その苦労が偲ばれました。

作者辻邦生((1925-1999)東京生れ。

「構想30年 美に生きる乱世の人間を描き続けた辻文学の集大成 美と行動の歌人西行の生涯を浮かび上がらせた絢爛たる歴史小説」

「花も鳥も風も月も――森羅万象が、お慕いしてやまぬ女院のお姿。なればこそ北面の勤めも捨て、浮島の俗世を出離した。笑む花を、歌う鳥を、物ぐるおしさもろともに、ひしと心に抱かんがために……。高貴なる世界に吹きかよう乱気流のさなか、権能・武力の現実とせめぎ合う“美”に身を置き通した行動の歌人。流麗雄偉なその生涯を、多彩な音色で唱いあげる交響絵巻。谷崎潤一郎賞受賞。」

話は西行を苦しいほど師と慕う、藤原秋実が師西行のことをさらに知りたくて、西行を知る人を訪ねて歩きます。それぞれの立場から幼い頃の西行(佐藤義清)のあれこれから語ります。

各帖を見ると全体のあらすじがわかります。

序の帖 藤原秋実、甲斐国八代荘の騒擾を語ること、ならびに長楽寺歌会に及ぶ条々

  「あの人のことを本当に書けるだろうか。あの人ーー私が長いこと師と呼んできたあの円位上人、西行のことを」と始まります。

一の帖 蓮照尼、紀ノ国田仲荘に西行幼時の乳母たりし往昔を語ること、ならびに黒菱武者こと氷見三郎に及ぶ条々
二の帖 藤原秋実、憑女黒禅尼に佐藤憲康の霊を喚招させ西行年少時の諸相を語らしむること、義清成功に及ぶ条々
三の帖 西住、草庵で若き西行の思い出を語ること、鳥羽院北面の事績に及ぶ条々
四の帖 堀河局の語る、義清の歌の心と恋の行方、ならびに忠盛清盛親子の野心に及ぶ条々
五の帖 西行の語る、女院観桜の宴に侍すること、ならびに三条京極第で見る弓張り月に及ぶ条々
六の帖 西住、病床で語る清盛論争のこと、ならびに憲康の死と西行遁世の志を述べる条々
七の帖 西住、西行の出離と草庵の日々を語り継ぐこと、ならびに関白忠通の野心に及ぶ条々
八の帖 西行の語る、女院御所別当清隆の心変りのこと、ならびに待賢門院の落飾に及ぶ条々
九の帖 堀河局の語る、待賢門院隠棲の大略、ならびに西行歌道修行の委細に及ぶ条々
十の帖 西行の語る、菩提院前斎院のこと、ならびに陸奥の旅立ちに及ぶ条々
十一の帖 西行が語る、陸奥の旅の大略、ならびに氷見三郎追討に及ぶ条々
十二の帖 寂然、西行との交遊を語ること、ならびに崇徳院の苦悶に及ぶ条々
十三の帖 寂念、高野の西行を語ること、ならびに鳥羽院崩御、保元の乱に及ぶ条々
十四の帖 寂然の語る、新院讃岐御配流のこと、ならびに西行高野入りに及ぶ条々
十五の帖 寂然、引きつづき讃岐の新院を語ること、ならびに新院崩御に及ぶ条々
十六の帖 西行、宮の法印の行状を語ること、ならびに四国白峰鎮魂に及ぶ条々
十七の帖 秋実、西行の日々と歌道を語ること、ならびに源平盛衰に及ぶ条々
十八の帖 秋実、西行の高野出離の真相を語ること、蓮花乗院勧進に及ぶ条々
十九の帖 西行の独語する重源来訪のこと、ならびに陸奥の旅に及ぶ条々
二十の帖 秋実の語る、玄徹治療のこと、ならびに西行、俊成父子に判詞懇請に及ぶ条々
二十一の帖 秋実、慈円と出遇うこと、ならびに弘川寺にて西行寂滅に及ぶ条々

西行がずっと支え続けてきた新院(崇徳院で、鳥羽院の第一皇子、母は待賢門院。西行はこの待賢門院(鳥羽院の中宮)を恋い慕う)がなくなった後半の16帖あたりから心に沁みる描写が増えてきます。

「私の修行とは、そうした物(森羅万象いきとしいけるもの)の好さに、深く心を済まして聞き入ることであった。(中略)物の好さに聞き入るには、自分を出なければならない、と感じた。自分を出るとは、最も深い意味で、自分という家を出ることなのである」

「歌の心とは、森羅万象を好きものとして受け取るところから始まるからだ。(中略)新院は歌の心を知っておられる。(中略)それなのにどうして歌の道を生きられなかったのか」と嘆く西行。

「秋実。この世は夢のようなものだと知ったとき、私は、それを留めうるのは歌であることも感じたのだ。」(中略)「私は師西行が生きるというとき、この夢幻を本気で引き受けているのを感じた。

心なき 身にもあはれは 知られけり 鴫立つ沢の 秋の夕暮 ーーー西行

「人はつねに何かの動機で心を失う、ある人は利害にとらわれて、ある人は愛欲にとらわれて。(中略)そう押したこの世の理法(ことわり)を超えて物の本源(おおもと)を開いてくれるのは、このあわれという思いなのだ。(中略)心が生命たる限りは、必ず戻ってくるべき場所がある。それが真の理法であり、この森羅万象の持つ愛しさ(かなしさ)、あわれなのだ」

「歌が仏像のように独立してそこに在るためには、やはり歌びとの手を離れ、もはや自分の評価とは別個に、それ自身で立つものでなければならない」

西行辞世の歌
願はくは 花のしたにて 春死なん そのきさらぎの望月の頃

「私自身が現実を超え、美の優位を心底から肉化できなければ、この作品を書いても意味がないーーそんなぎりぎりの地点で生きていたような気がするーーー辻邦生

この本は若い頃ではなく、今この歳で読んだので、こんなに心に沁みたのではないかと思いました。歌心のない私は歌を写真に置き換えて読みました。写真も同じように思われました。

とても上質な本です。ちょっと大変ですが、ぜひお読みください。

テーマ : 最近読んだ本 - ジャンル : 本・雑誌

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