本書は第161回芥川賞受賞作。
著者今村夏子は1980年広島生まれ。大学卒業後、アルバイトを転々としたと言っています。その一つがホテルの客室清掃。村田沙耶香の『コンビニ人間』同様、バイトから生まれた小説です。芥川賞2度候補となり、3度目で受賞したとのこと。
著者は友達のいない女を書きたかったと言っています。とは言っても作者は結婚もしているし、子供もいる人です。
「うちの近所に「「むらさきのスカートの女」と呼ばれている人がいる。いつもむらさき色のスカートを穿いているのでそう呼ばれているのだ」と書き始まる。
「むらさきのスカートの女」と「オレンジのカーディガンの女」。
むらさきのスカートの女は日野まゆ子という名前があるのに、オレンジのカーディガンの女(ナレーターである「わたし」でホテルの客室清掃員をしている)に最後までずっと「むらさきのスカートの女」と呼ばれ続ける。仕事の制服を着ている時でさえ、そう呼ばれている。
「むらさきのスカートの女」は元スポーツ選手で抜群に運動神経がいい。そして公園で遊ぶ子供たちからも強い関心を持たれている。
近所の公園には「むらさきのスカートの女専用シート」と名付けられたベンチまである。「むらさきのスカートの女」は「わたし」の姉に似ているし、幼馴染にも似ている。「わたし」はこの「むらさきのスカートの女」と友達になりたいのだ。「わたし」は不定期のアルバイト暮らしの「むらさきのスカートの女」の勤務状況、就活状況等を詳細に調べ上げており、まるでストーカーだ。
就活をする「むらさきのスカートの女」が「わたし」と同じホテルに採用されるよう、求人雑誌をコンビニにもらいに行ったりし、「わたし」の努力が功を奏して、同じホテルで働くことになる。「わたし」は常に「むらさきのスカートの女」を観察し続ける。
「むらさきのスカートの女」は「わたし」の予測を超えた行動を起こす。上司と不倫関係になるのだ。
ホテルの客室清掃員の様子、人間関係も軽妙に描かれています。最後はびっくりするような展開が用意されていて、話の展開が実にうまい。シュールでドキっとさせられます。
サクサク読めるので、お読みになってください。読みやすい本はいいですね。このところ読むにくい本を読んでいたのでとりわけそう感じました。
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