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『騎士団長殺し』 ー第1部 顕れるイデア編、 第2部 遷ろうメタファー編 村上春樹 (英題  Killing Commendatore)

村上春樹(1949年京都生まれ 兵庫県育ち)の7年ぶりの1050ページの超長大作です。図書館の予約して1年以上待ちました。(図書館が著作権を侵害しているというのはよく理解できるけど、新刊書は年金生活者には高くて。。。)

面白くて、グイグイと引っ張られて、久しぶりに熱中した読書ができました。「面白い」というと「ハルキスト?」と聞かれますが、数冊しか読んでいないし、特にファンということではありません。

「『1Q84』から7年――、
待ちかねた書き下ろし本格長編

その年の五月から翌年の初めにかけて、私は狭い谷間の入り口近くの、山の上に住んでいた。夏には谷の奥の方でひっきりなしに雨が降ったが、谷の外側はだいたい晴れていた……それは孤独で静謐な日々であるはずだった。騎士団長が顕れるまでは」

私は上下巻の副題にある「イデア」とか「メタファー」という西洋哲学の概念は苦手で、よく理解できません。どちらかというと日本昔ばなしや怪異譚に置き換えて読んだ方がわかりやすいかもしれません。

主人公は「私」、36歳の男性の肖像画家。 まず、プロローグで、メタファーの「顔のない男」の肖像画を描こうとするが、「何もないものをどう造形すればいいの」かわからず、描けなかったというところから始まります。

主人公「私」は突然、思いもよらず妻から離婚を突きつけられ、ボロのプジョーで北へと傷心の旅に出かけます。旅から戻り、住むところのない「私」に、美大時代の友達雨田政彦が父親の家に留守番として住まないかと持ちかける。彼の父は雨田具彦という高名な日本画家で、今は90歳を超えて認知症を患い、伊豆の施設に入居している。雨田具彦の小田原郊外の山の上にあるアトリエ兼住居は空き家となっていた。「私」は生活のための肖像画を描くことを断り、この雨田具彦の山の上の家で自分の本当に描きたい絵を模索するようになる。

この物語は小田原郊外の山の上で暮らした9ヶ月間の回想です。

ある日、「私」はがさがさいう音がアトリエの屋根裏から聞こえ、上ってみると、そこには「騎士団長殺し」と題した大きな日本画があった。それは雨田具彦の画集には掲載されていない、モーツアルトの「ドン・ジョバンニ」をモチーフにしたもののようだった。

「私」は友人雨田政彦から小田原駅前のカルチャー教室で絵の講師を紹介される。そして山の上の家で、教室で出会った女性と関係を持ったり、日本画家雨田具彦について調べたり、具彦のレコードを聴いたり、別れた妻を回想したりして暮らす。

ある深夜に鈴の音が聞こえて、目を覚ました。そんな時、山向こうの富豪、免色渉が法外な金額で肖像画を描いてほしいと現れる。そして、彼と一緒にその鈴の音が聞こえる穴を掘ることになり、その穴の中には古い鈴がひとつ残されており、それを持ち帰りる。

免色渉は大きな屋敷に住み、外車を4台も持ち、「華麗なるギャッツビー」や村上ファンドの村上氏を連想させます。この富豪も色彩のない名前です。作者は名前に色のないということにこだわりを持っているようです。それはなんのメタファーなのでしょうか?
http://wako1202.blog50.fc2.com/blog-entry-571.html

免色渉の依頼により、彼の生徒である絵画教室に通う中学一年の美少女、秋川まりえの肖像を描くことになる。まりえは「私」の12歳でなくなった妹を思い出させる。免色はこのまりえを自分の娘ではないかと思って、この豪邸を半ば強引に買い、山向こうから毎夜双眼鏡でまりえを見ていたのだ。一方、具彦の絵の「騎士団長」は絵から抜け出て、「私」の前に姿を見せる。絵と同じサイズの60cmのイデアだが、「私」とまりえ(第2部)にしか見えない。

この間に別れた妻柚(ユズ)や妹小径(コミ)との回想が織り込まれています。ここで第1巻が終わります。

下巻ではこの「騎士団長」のイデアや「顔なが」のメタファー助けを借りて行方不明になったまりえを助けるため、何かに導かれるように異界の世界を探し回ることになります。

現実と非現実(時に夢)、存在と非存在、目に見えるものと見えないもの(見える人と見えない人)、イデア(観念)の世界。『1Q84』同様現実の世界と異界の壁が溶けてなくなるような狭間の世界が描かれています。

免色のセリフ
「自分という存在の意味が、自分がこうしてここに生きていることの理由が、今ひとつよくわからなくなってきました。 ・・・・ これまで確かだと見なしていたものごとの価値が、思いもよらず不確かなものになっていくみたいに」

「涅槃(ねはん)は生死を超えたところにあるものです。 ・・・・肉体は死滅したとしても、魂は生死を超えた場所に移っていることもできるでしょう。 ・・・・この世の肉体というのはあくまでかりそめの宿に過ぎませんから。 」

この免色は容姿、資産、頭脳、知識、自己抑制について抜きん出た人物として描かれています。

本書には相変わらず音楽、車、絵画、哲学などの深い造詣が随所にキラキラと光っています。これをうざいと感じる人もいることでしょう。

まりえの父がオウム真理教を思わせる宗教団体に入れ込んでいたり、神戸や東日本大震災があったり、歴史的にはナチス、南京大虐殺が重要な背景として描かれています。

「私」は免色の肖像画を描く時、「アイデアは唐突に、しかし自然にやってきた。・・・・それがどのような絵に進展していくのか、自分でも予想がつかなかった・・・・・もしそこにひとつの流れがあるのなら、流れとともに進んでいくしかない。・・・ 考えないことが何より大事だった。・・・・しかるべき時間の経過がおそらく私に、それがなんであるかを教えてくれるはずだ。それを待たなくてはならない」と肖像画の定石を外して描き始める。

「騎士団長」は言う。「つまり他者による認識のないところにイデアは存在し得ない。・・・イデアは他者の認識そのものをエネルギー源として存在している。・・・・・ なぜならば、人が何かを考えるのをやめようと思って、考えるのをやめることは、ほとんど不可能だからだ。何かを考えるのをやめようと考えるのも考えのひとつであって、その考えを持っている限り、その何かもまた考えられているからだ。何かを考えるのをやめるためには、それをやめようと考えること自体をやめなくてはならない」

村上春樹は小説を書く時、この画家「私」のように物語を紡いでいるのでしょうか。穴の中に入り、暗闇の中に身を置いて、現実と非現実の狭間で自分の魂に出会って、それを再現しているのでしょうか。「穴」ー大江健三郎や安部公房も穴にこだわっていたなあと思いました。

目に見えない現実の世界。

ハルキらしくなく、ハッピーエンド?でしたが、この本は「上下巻」ではなく、第1巻、第2巻なので、『1Q84』のように第3巻があるのでしょうか。
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『R帝国』 中村文則

本書は作者中村文則(1977年、愛知生まれ)の18冊目の本だそうです。私の読んだ彼の本はこれが3冊目です。本書は『教団X』と似たような重量感を持っています。
http://wako1202.blog50.fc2.com/blog-entry-827.html

作者中村は「作家として覚悟を持って書いた」と語っています。さらに執筆動機を「現在が右傾化しているという危機感があるからです。フェイクニュースであるとか、メディアの委縮、ネット上の差別などがものすごく広がっているなかで、作家として何ができるだろうと考えて、こういう小説になった。」そうです。

表題の裏ページに「人々は、小さな嘘より大きな嘘に騙されやすい」というアドルフ・ヒトラーの言葉が引用されています。

「舞台は、近未来の架空の島国・R帝国。ある日、矢崎はR帝国が隣国と戦争を始めたことを知る。だが、何かがおかしい。国家を支配する絶対的な存在”党”と、謎の組織「L」。やがて世界は、思わぬ方向へと暴走していく――。世界の真実を炙り出す驚愕の物語。」

絶対権力の「党」に支配された島国・R帝国は国民の圧倒的な支持のもとに他国との戦争を繰り返している。R帝国は民主主義国家を標榜するため、野党もあるが、実態は与党R党が99%を占める独裁国家だ。街には防犯カメラが設置され、常に国民は国家から徹底的に監視されている。党の施策に疑問を呈すれば、巧妙な情報操作で排除されていく全体主義の管理社会だ。ジョージ・オーウェルの『1984』を思わせるデストピア小説です。
http://wako1202.blog50.fc2.com/blog-entry-796.html

「朝、目が覚めると戦争が始まっていた」という一文で始まります。AIが搭載された携帯電話HP (Human Phone) は自ら意志を持ち、会話することができます。

本書の主人公は矢崎とアルファ、栗原とサキ、二組の男女とHP。
R帝国最北の島コーマ市に暮らす会社員の矢崎は突然街はY宗国による激しい空爆に襲われ、原発が占拠された。大勢の人が虫けらのように殺される。矢崎はそんな中、Y宗国のテログループの女兵士アルファに助けられる。

一方首都では弱小野党の議員片岡の秘書、栗原が地下組織「L」のサキと出会うが、国家の策謀に巻き込まれて行く。 

R帝国の「党」の主要人物である加賀が「人々が欲しいのは、真実ではなく半径5メートルの幸福なのだ」と繰り返し言う。「党」は移民を軽蔑、差別し、ヘイトスピーチにより憎悪を掻き立てる。コーマ島が占拠され、原発が破壊される。

登場人物の姓は日本人の名前だが、「日本」という国は小説に出てくる国であり、舞台はR帝国だ。加賀は栗原に小説の中の日本国ではかつて沖縄戦があったと沖縄戦の国家の非道さと悲惨さを語る。

本書に登場する全ての国々はアルファベット1文字です。きっと意味があって作者がつけていると思いますが、このR帝国のRはRound(日の丸)、地下組織のLはLibertyかなと思いました。

それに加賀のような悪の非道な人物をもっと魅力的に描けていれば、SF的ディストピアもさらにリアルに感じられたと思います。


絶対多数の自民党が森友学園のような教育方針を推奨し、次々に戦前へ回帰するような法案を通してきています。R帝国の国民を監視する管理社会がもうそこまできているようで、背筋がゾッとしてきます。孫たちの時代は平和で、自由に自分の意見の言える社会でなければなりません。今私たちに何ができるでしょうか。


『教団X』も、本書も面白かったのですが、読売新聞の連載小説だったからか、エンターテイメントに傾きすぎているように思いました。
本書だけではなく、近年ディストピア小説がよく書かれ、読まれていますが、どれも、ジョージ・オーウェルの『1984』には及びませんね。

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ゴールデンウィーク 初夏の風

今日はゴールデンウィーク最終日、皆様はいかにお過ごしでしたでしょうか。連休後半は雨との予報を裏切り、連日五月晴れでした!

このところ本の感想ばかりでしたので、近場で撮った5月の風を載せたいとおもいます。

5月1日 横浜にて 今横浜はGarden Necklace in Yokohamaと題し、横浜各地をお花で飾っています。今はバラが綺麗です。 

ベイブリッジを背景に深紅のバラ 港の見える丘公園 (多重露光) 

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マリンタワーとバラ (山下公園)
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バラとミツバチ
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5月2日
芝の増上寺には水子地蔵がたくさんあります。風車が時折風でクルクル回っていました。青モミジも綺麗でした。

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東京タワーの333の鯉のぼり

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5月4日
カニを獲りたいいカイ君(6歳)たちと一緒に江ノ島に行きました。
風の強い日でした。岩屋に行く船は欠航。

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江島神社へ行く参道は初詣のような混雑ぶり。10時ごろからレストランに並ぶ人で、歩くこともできません。

階段を上ったり降りたりして、やっと岩屋のある岩場へ着きました。岩屋も長蛇の列。昨年の台風で被害の大きかった岩屋はゴールデンウィークに合わせて再開していましたが、強風で岩場はクローズ。カニ獲りはできませんでした。。。

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片瀬海岸に戻りました。子供たちは砂浜で駆け回っていました。

餌を求めて低く飛ぶトンビとウィンドサーフィンを楽しむ人々

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5月5日 子供の日

近くの神社で恒例の泣き相撲が行われました。元気に育てとおじいちゃん、おばあちゃん、家族総出でたくさんの赤ちゃんが集まりました。平和です。
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今週の8日火曜日からあざみ野アートフォーラムで122名による合同写真展が開催されます。一人6〜9点。私も「連帯ーPride in London」と題する9枚の組写真を出品しました。お時間のある方はお遊びにおいでいただけたら、嬉しいです。

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