久しぶりに渋谷でウェイ・ダーション監督の『セディク・バレ』という台湾映画を見ました。
第1部「太陽旗」、第2部「虹の橋」で休憩を挟み、4時間36分という長編映画です。
http://www.u-picc.com/seediqbale/
初日でウェイ・ダーション監督と種田陽平美術監督の挨拶、インタビューがありました。キャストは素人のセディク族の人々で、足場の悪い大自然の中で、セディク族、日本人共に納得のいく歴史考証に基づいて、セットを組んだということでした。
劇場は大変な混雑ぶりでした。
中国は日清戦争に敗れ、1895年台湾を日本に割譲し、台湾は1945年まで50年間日本の統治下におかれていました。これは史実の基づいた映画です。1930年の狩猟民族セディク族による抗日運動、武装蜂起(霧社事件と呼ばれている)を背景に、部族の誇り、魂の尊厳、家族への思いを描いたドラマです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/霧社事件。
霧社は台湾中部の山岳地帯にある。(社とは集落という意味で、行政機関の集まる中心部の地名だった。当時セディク族は3つの蕃(集団)タクダヤ、タウツァ、トロックに分かれていた。それぞれの蕃にはいくつもの社があり、タクダヤ蕃は霧社蕃と呼ばれ、台湾原住民は蕃人と呼ばれていた)
映画の冒頭では狩り場を巡って、大自然の渓流が流れる山中、部族同士の戦いが繰り広げられる。少年は敵を倒し、その首を刈り取って一人前の真実の男となり、顔に入れ墨を入れる。セディク・バレとは真の人という意味である。
主人公は霧社セディク族マヘボ社の頭目モーナ・ルダオ(リン・チンタイ)。親から子へと狩りの仕方とともに狩り場を守る男の生き方、誇り、習慣を受け継いでいく。
日本の支配下に置かれ、部族の誇りを傷つけられ、モーナは300名の仲間とともに決起部隊を編成し、日本の圧政に果敢に立ち向かうが、日本軍の大砲、空爆、毒ガスに追いつめられ、壮絶な最後を迎える。その後第2次霧社事件も起き、セディク族は激減する。
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映画としては血にまみれた大迫力のアクション映画で、日本人の原住民族蔑視が事件の引き金となりますが、日本人がこの映画を見て辛いということはありませんでした。なぜならタランティーノやたけしのバイオレンス映画のように非常い乾いているからです。大自然の中を駆け回る姿はダニエル・デイ・ルイスが演じた「ラスト・オブ・モヒカン」を思い出させます。
アクションだけではなく、家族の絆や日本の巡査となり日本名を名乗る原住民の、身を引き裂かれる苦悩が描かれています。ビビアン・スーなどが出演していますが、女性の影の薄い映画です。
日本人俳優は木村祐一、安藤政信、田中千絵、河原さぶ出演。
現地キャストは素人の原住民族で、映画はセディク語と日本語。
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現在までに公認されている台湾原住民族は14、公認されてない民族も多い。
台湾原住民
http://ja.wikipedia.org/wiki/台湾原住
霧社事件の勇猛果敢な戦いぶりから太平洋戦争末期、台湾原住民(高山族)により高砂義勇隊が編成されたそうです。
戦後十分な補償がなされず、裁判にもなりました。この映画を見て断片的だった台湾の知識が一つにつながりました。
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